松山家庭裁判所 昭和39年(家)833号 審判 1966年5月30日
申立人 石田ミキ子(仮名)
主文
本件申立を却下する
理由
本件申立の趣旨は「被相続人亡加藤ミナの相続財産たる(1)松山市○○町一二番地宅地八一・三五平方メートル(二四坪六合一勺)および(2)同所にある家屋番号一五番居宅木造瓦葺二階建一階四八・六九平方メー卜ル(一四坪七合三勺)二階二三・四三平方メー卜ル(七坪九勺)付属第一物置木造瓦葺平家建一四・七四平方メートル(四坪四合六勺)を申立人に与える。」旨の審判を求め、その実情として
「被相続人は昭和二一年一一月一日死亡したが、相続人がなかつたため、申立人において、昭和三八年八月五日当庁に相続財産管理人の選任の申立をなし、その後相続人不存在に関する法定の手続を経て、昭和三九年一〇月三一日の経過とともに、相続人不存在が確定した。ところで被相続人には、死亡当時約二三年間苦楽をともにした内縁の夫亡石田和男がおり、同人とその子石田辰男が被相続人の葬儀を済ませた。申立人は被相続人の死亡後である昭和二二年石田辰男と結婚したが、その後、和男、辰男とも死亡したので、申立人において、被相続人の遺産である前記不動産を管理するとともに、被相続人の祭祀を行なつてきた。以上のような次第で申立人は被相続人の特別縁故者にあたるから相続財産の分与を求める。」というのである。
しかしながら民法第九五八条の三の規定に基づき、被相続人の相続財産から分与をうけうる資格のあるものは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者など、すくなくとも被相続人の生前において被相続人の縁故関係があつた者を指すのであり、この資格は一身専属的であつて、相続の対象となるものではないと解すべきところ、本件においては、申立人が被相続人の生前、被相続人と面識があり、または何らかの縁故関係があつたとの資料は何ら存しないから、たとえ申立人が被相続人の死後その祭祀を行ない、かつ被相続人の相続財産を管理してきた事情があつたとしても、特別縁故者として、申立人に相続財産を分与することは相当でない。
よつて、本件申立を却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 糟谷忠男)